銀河鉄道のエロス  By SAKAI

ふと目覚めると、ジョバンニは輝くように明るい列車の室内にいたのだった。
「ジョバンニ、やっと、目が覚めたかい?」カンパネルラは、少し微笑みながらジョバンニに言った。
「ほうら、もう直ぐ乙女座の股間の間をくぐっていくよ。」カンパネルラは、ジョバンニのほうを向いて、乙女座の輝く股間を指差した。
銀河鉄道は、乙女の股の下を、ぐんぐん走っていく。
「ちょっと湿っぽくなったね」ジョバンニは、大きく息苦しいような感じがして、そう言った。
「おとめ座の股下を走る時は、いつも列車内の湿度が上がるらしいんだ。でも、乙女座の股下を過ぎればすぐに元に戻るよ。」
カンパネルラは、なんだか股間にムズムズするのを感じながら、窓の外を眺めながら言った。
乙女座の股を通過する時は、性に目覚めようとする少年の股間を熱くしてしまうのだった。
そんな時、無意識にこみ上げてくる欲情が、少年たちの心を不安とも期待ともつかない青春の疼きというやつを、否応なしに気づかせてしまうのだった。

列車の入り口が、ボゥっと明るくなったかと思うと、窓の外には銀色のススキの川原が現れました。
その、野原の真ん中に1本の道があり、その道を何千何万という小さな子供のような人々が「ストーンズのsatisfaction」を歌いながら、プリオシン海岸の方向に歩いてゆきます。
「あの小さな子供たちは、何なのだろう?」ジョバンニは不思議に思い、カンパネルラに言いました。
「ああ、あれは、自慰行為で虚しく消えたいった精子や、子供になることも無く排卵されていった卵子の精霊達だよ」
カンパネルラは、遠くを歩き続ける、そのちいさな精霊たちを見つめて答えました。

「ここの席、ようござんすか?」
酒臭い赤ら顔の親父が、窓の外も見つめていた2人に、唐突に話しかけてきた。
「精霊たちを見てるんでござんすね」親父は少しニヤケタ顔で話かけた。
「ぼっちゃん達も、自慰行為のやり過ぎは体に毒ですぜ。」そう続けて話す親父だったが、2人は答えるすべもなく沈黙していた。
「青春真っ只中のぼっちゃん達に、このクッキーをあげませう。」そう言って、赤ら顔の親父は、コウノトリの形のクッキーを2人に手渡した。
大きさは手のひらくらいで、コウノトリが飛んでいる形だった。
「まぁ、食べてごらなせい。」と強引に、クッキーを2人に食べさせた。
「うっ・・これは、美味い!」2人は、ちょっとびっくりしたように叫んだ。
「そうでがんしょ。このクッキーは特別なんでがすよ」そして続けて話した。
「銀河には、コウノトリの形をした鳥が沢山飛んでいやす。この鳥は性欲の化身なんでがすよ。アッシは、その鳥を捕まえてクッキーにして売り歩いているのでがんす」
酒臭い匂いを発散させながら、親父は左目をウィンクして見せた。
2人の股間は、なんだかウズウズしてくるのを感じた。
「このクッキーは、生命の進化を司るクッキーなんでがんすよ。このクッキーを食べないと、その種は滅んでしまうんですぜ。まぁ、アッシは、その種の繁栄と進化のお手伝いをしているんでさぁ。」親父は、少し誇らしげに語った。
そうして、話すことを話し終わったなら、親父はさっさと先の列車に行ってしまった。

「僕、なんだか、性器が固くなってきたよ」ジョバンニは、カンパネルラに言った。
「ぼくもさっ・・・」カンパネルラも答えた。
可愛い同級生の女の子が、目の前にいたならば犯してしまっただろう。
「カンパネルラ・・・本当のエロスってなんだろうね」ジョバンニは、少し恥ずかしい気持ちで言ってみた。
「僕は、わからない・・・」カンパネルラは、独り言のようにつぶやいた。
むらむらする股間を抱きながら、ジョバンニは言った。
「僕はもう、あんな大きな闇だってこわくない。きっとみんなのほんとうのエロスを探しにゆくよ。どこまでも、どこまでも、僕たち一緒に進んでゆこう!」
そういい終えると、ジョバンニの性器は、固く固くなっていたのだった。